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藤子不二雄SF全短篇

仕事が片付いたので「藤子不二雄SF全短篇」全3巻を読む。藤子でSFであるからもちろんFであるが、僕の読んだのは古い版なのでFとは書いていなかった。各巻1000ページ近い大変なボリュームなので思った以上に読むのに時間がかかった。

もちろん収められている短編の量も多く、それだけにアイデアの重複する作品がいくつかあるのが意外と言えば意外だった。神になるとか、超人的な肉体・精神力のような「万能の力を手に入れる話」など。しかしこれは筒井康隆が解説で語っている、以下のようなことに関連しているのだろう。

SFというジャンルのアイディアは昨今ほとんど出尽した観がある。誰が書いたSF作品を読んでも、過去にそれと類似のアイディアがなかったためしはない。したがって最近では、といっても二十数年前からであるが、おれが一SFファンであったあの過熱気味の揺籃期みたいに「これはあの作品の二番煎じだ」「これはだれそれがすでに書いている」といって論争するようなことはまったくなくなってしまった。そうしたアイディアはすべてSFにとって日常のものとなり、そのアイディアによっていかに現代を照射するか、いかに問題を際立たせるかが現代SFの課題となっている。


以上のことは、SFだけでなく僕の周囲では目下のところまったく無意味な倦怠を迎えているように思われる「作品について語ること」全体について言えることであるのは間違いない。20年も昔にこんなことが言われているのに、うかうかしているヒマなどあるだろうか。

それはともかく、なんだか解説のことばかりになってしまうが、この解説の結びには以下のように書かれている。

公害、老人、土地、女性、サラリーマン、生き甲斐、不倫、ストレス、食料等、多くの問題が失われた機能にかわるものとしてとりあげられている藤子不二雄のこれら諸短編は、深い幻滅に結びついたポスト・モダン状況の中で今こそ軽やかに読み返されなければならないだろう。

たしかにこれは80年代が迎えた物語の状況を説明しており、当時の読者に語りかける言葉として正しい。しかし00年代の読者である僕がこの本を読むと、作者はまず「ドラえもんではないもの」という意図でもって、これらの社会的なテーマを選んでいるように思われた。最終的に物語のテーマとして社会問題について語ろうとしているだけで、根っこの部分ではこれらの短編は「ドラえもん」と変わらない。「まえがき」で藤子不二雄自身が

「オバQ」「ドラえもん」と根は一つなのです。


と書いているのは全く正確なのである。

その「根」というのは、例えば「神になったらどうする・どうなる」というような、SF的な「もしも」なのだろう。それによって何を見せるのか、というときにこの全集の作品群では、ドラえもんのような「明るい楽天的な生活ギャグマンガ」ではないものとして、筒井康隆の言う「いかに現代を照射するか」を選んでいるわけである。

そして、この全集にはどう読んでも「明るい楽天的な生活ギャグ」と寸分違わぬストーリー展開を持ち、それでいて社会的なテーマを見事に描ききった作品まである。「なるほど、藤子不二雄のSF短編とは要するにSF的なモチーフと社会問題というテーマの合わせ技なのだな」と勝手な理解をして読んでいたが、もちろん両義的に成り立っていることだってあるのだ。「社会的なテーマがあるから大人のものだ」とか「ひみつ道具を使ったギャグだから子供のものだ」という読み方を僕はしなかったし、今さらそんな読者がいるかどうか分からないが、これにはけっこう驚いた。それはやはり、うっかり「ドラえもん」ではなく「SF短編」なのだ、と思って読んでしまったから、冷や水を浴びせられたわけである。しかし、ではこれらが「SF短編」として「ドラえもん」と切り離された全集に収められるなら、SFって一体何なんだろうと、本当に今さらボンヤリしてしまう。ボンヤリしながら、そうか、これが「すこし・ふしぎ」なんだろうか、と思った。

「エスパー魔美」の原型であるか、もしくは同じモチーフを描いた「アン子大いに怒る」「中年スーパーマン左江内氏」や、ヨドバ氏のカメラのシリーズ(月曜ドラマランド「藤子不二雄の夢カメラ」で有名だが、ドラマの方は内容が全く異なるらしい)などはそういうものが高い完成度で結実したものだと思う。特に僕はヨドバ氏が好きだ。「ドラえもんではないもの」として「社会問題」を選んだ藤子不二雄が、最終的に「笑ゥせぇるすまん」とは違うものを作り上げたところがとても好きだ。

2006.12.27 | | コメント(0) | トラックバック(0) | [マンガ] [文章

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