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気まぐれコンセプト

たまたまウェブで「気まぐれコンセプト」の単行本(新刊)が出るという情報を見た。「気まコン」と言えば以前から、たいへん重要なマンガのに誰も注目していないという話を会う人ごとにして、また文章にも書いていたのだが、そうしたらばるぼらさんがわざわざ絶版となっている単行本を贈ってくださったのだった。ちょうど昨日あたり、ばるぼらさんにリンクしていただいていたので、それに引っかけながら、今度の新刊やこの作品の不可思議な黙殺についてまたしつこく書いてみようと思い、さっそくスピリッツを読んで情報を仕入れた。今週号の絵で見る限りでは、装丁は旧単行本に合わせたペーパーバック風のもののようだった。それで今ブラウザを開いてみたら、ばるぼらさんが既にそれについて書かれていて、なんだか見透かされたような気分で恥ずかしい。

これの一巻は前に人にプレゼントしてしまったので今手元にないが、現在とは違い、業界ネタが主流ではあるものの、時事ネタが希薄だったように記憶する。

このプレゼントしていただいたのが僕である。内容を確認できなくなってしまって申し訳なく思いながら、いただいた単行本を読み直してみた。ばるぼらさんもおっしゃっているように、時事ネタより広告業界ネタが多く、欄外に広告業界用語が脚注として付けられている。ただ、読み返してみると現在の基本路線である時事ネタもそれなりに散りばめられているようだ。連載当時に全くなかったわけではないようだ。当初に大幅な分量を割いていた業界ネタが尽きたため、時事ネタだけが残った、という感じかもしれない。最もストレートな時事ネタでは「オールナイトフジ」や「アクアフレッシュ」のCMの話などがあった。いずれにせよあくまで広告業界にまつわる話として取り上げられているのが現在との違いかもしれない。今では酒の席で使えるような「面白い話」として時事ネタが使われていることも多々あると思う。また現在ほとんど残っていないパターンの話として、時事ネタでも業界ネタでもない単なるギャグ4コマのような話もいくつかあるのが意外で面白かった。

しかし20年以上前の本だけあって、意図的に挿入された時事ネタでなく普通に描写しているだけのものでも現在の世相や風俗とは異なっている点が多くて面白い。「トルコ」や「女子大生」なんてまさにそうである。しかし最も時代を感じさせるのはパソコンだ。この本には「OA」や「ワード・プロセッサー」などのデジタル機器が登場するが、しかし各章の扉では、広告業界に必須のアイテムとしてデザイナーが使うディバイダやトリミングスケールなどのアナログな用具が解説付きで図示される。作中において結局「OA」はこれらのツールに花を添える脇役の1つでしかないが、「IT」はこれらすべてに取って代わって、世界を劇的に変えてしまったのだなあと思う。テレビ局にCMを納品する1インチVTRテープなどは、たぶん今でも現役じゃないかなと思うが、もうすぐテレビ放送がデジタルになってしまえば、役割を終えてしまうのかしら。

時事ネタとしては「六本木の一等地」に「ビデオやレコード等、オーディオビジュアルソフトのデパート」として建った六本木WAVEの話が載っていたり、漠然と「景気が良かったはずだ」という印象を持っているのにセリフの中では「ゼロ成長時代」なんて言われているのが興味深いと思った。やはりこれは穿った見方など全く必要なしに、日本の一時代を描いた貴重な資料なのだ。しかし、この本がどんなものかもよく考えずに、ほとんど「美味しんぼ」のような予定調和マンガや、サラリーマンが退屈しのぎに読む軽い4コマのように考えている人の方が多そうだと思う。「あえて」楽しんで読んでいますという難儀な人も含めて、「気まコン」は誰にも顧みられてこなかった作品なのである。ばるぼらさんのおっしゃるように、

これも語られない漫画であり、漫画史から抹殺され続ける不遇の作品だなあ。

ということになる。ばるぼらさんに先に言われてしまったので僕が繰り返すまでもないのだが、しかし僕はまた、最近は過去のマンガを積極的に読んだり、80年代や90年代、そして00年代の文化全般について何かを主張しようという人がかなりの数いるのに、こういう作品について語ろうという人が全く存在しないということそのものにも、興味がある。マンガであれ、音楽や世代であれ、サブカルチャー全体であれ、今僕が目にする言論のほとんどが、こういうものを見過ごした上で主張されているように思えてたいへん気になる。「萌え」とか「オタク」が流行ったって、いやむしろ流行ったからこそ、今のマンガの語り手からこの作品はますます無視される結果になっているものだと思う。もちろん、誰もが意識する必要なんてないのだ。しかし意識する語り手が全くいないのはおかしい。また、誰もこれを意識していないのに、いずれの論客も、あたかもすべての過去をフラットに見通せているかのように物事を語るのは、たいへん奇妙に思う。

今回の新刊「気まぐれコンセプト クロニクル」はおそらく、映画「バブルへGO!」との連動を目論んだものなのだろう。これらをまたも自分とは無関係だとする人もいると思うと残念に思う。個人的にはバブルだけにこだわっているわけではないので、どうせ新刊を出すならバブル前期から現在までの膨大な量を全部読みたいくらいなのだけれど。

2007.01.07 | | コメント(2) | トラックバック(0) | [マンガ] [映像] [文章

コメント

こんにちは、初めてコメントします。

アマゾンのベストセラーリストの15位にこの本が入っていて、中身を確認したくてググッたところこのページにたどり着きました。

気まぐれコンセプトは好きな漫画だったのですが、見開き1ページしかないので立ち読みでは探しにくい、なによりスピリッツを読まなくなってしまって最近は全然読んでいませんでした。こういう人も意外と多いのでは?

発売前からアマゾンのベストセラーリストに入っていることから考えて、潜在的なファンを意外と多く、吾妻ひでおのようなブレイクが期待できるかもしれませんね。

2007-01-14 日 15:35:51 | | snark #- [ 編集]

snarkさん、コメントありがとうございます!僕もGoogleなどから気まぐれコンセプトがらみでこのブログに来られる方が予想以上に多いので、潜在的なファン層の厚さを思い知りました。

それだけに、マンガ史的にはまともに論じられていないのは残念かなと思います。Wikipediaの同作品の項目などはあまりにひどいですね。新単行本や映画を期に「昔から読んでいる」という人が発言する機会が増えて、この作品に対するいろいろな意見が見聞できたらいいなと思っております。

2007-01-15 月 06:22:53 | | ソメル #- [ 編集]

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