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北斗の拳

先月までは80年代のマンガについて考えていたのだが、いろんな事情が重なって90年代、とくに90年代前半のマンガ全体について考える必要を感じたので、80年代はいったん放り出して90年代のマンガについてちょいと頭を巡らせたが、それを自分で考え出すとすごく面倒な作業になるなとすぐに気づいたので今はそういうアプローチでモノを考えるのは止めにした。しかし、タイミング的にはベストのだと思うのでいつかゆっくり考えてみたいな。80年代について考えるのが終わるころには。

で、話は前後するが80年代についてはずいぶん長きにわたって考えていたのだが、さしあたって先月から今月にかけて読んでいたのは北斗の拳だった。僕が80年代の、特にジャンプのマンガについて読む際にはもっぱら「戦う理由」ばかりを注視している。今さら言うまでもないが、それは90年代にまでずっと連なり、ついには9.11以降などと呼ばれる現在において「物語」が直面してしまった大きなテーマだと考えている。そんな理由で80年代のマンガを読む意味があるのかどうかはよく分からないが、気になるので読んでいる。

北斗の拳は原作付きだからかどうか知らないが、話の構成がきわめてしっかりしている。最もしっかりとしているのはシンが死ぬまでの1~10話で、「核戦争後の地球において、今日を生きる」とかケンシロウのユリア探しとかいかにも作品として読ませたいテーマが登場する。おそらくここまでのプロットは連載前から存在し、ここで大団円としても原作者としてはよかったのではないか。もちろん連載は続行され、ケンシロウは戦い続ける。

だからシンが死んだ後のケンシロウは、いきなり戦う理由を喪失している。新展開は「砂漠の中に突然出現した町………この町はケンにとって安住の地となりうるか……」というナレーションと共に開始するが、あまりにとってつけたようである上に前回との関連のなさが余計に際だっている。取りあえずケンシロウは、ならず者をばったばったと殺していくわけだが、そこには「ユリアを探しながら旅を続け、今日を生きる人々を支援する」みたいなわかりやすい行動の原動力は感じられない。おかげでケンシロウは余計に殺人マシーンとして無口で感情のないキャラクターに変貌していく。この状態はレイやマミヤが登場しても変わらない。マミヤはユリアに似た女性として謎めいた描かれ方をするが、ホントにただ似てるだけなので全然盛り上がらない。なんとなく利用価値がありそうな人物なので死兆星を見てすらも生き残った彼女だが、結局この物語においてさしたる重要性を与えられずに消えていく。

ケンシロウが新たに戦う目的を見いだすのはもちろん北斗の4兄弟、そして拳王ことラオウの話においてであるが、ケンシロウもこの物語自体も全く不幸としか言いようがないのは、ラオウの死後もなおやっぱりダラダラとケンシロウは戦い続けなければならなかった点である。新展開を迎えるたびに物語はとりとめなくなり、各展開がバラバラに寸断されたブロックとしてしか存在せず、すなわち大筋を失って、ついには尻切れトンボに終わってしまう。

全体として北斗の拳は「キン肉マン」を読んだときに感じた「特に理由もなく戦い続ける」物語の1つなのだが、その中でも最もよくプロットが練られ、成熟したものだと思う。結局ケンシロウには最初から戦う理由などなく、その理由の提示ばかりによって物語は維持され、そしてその理由自体が物語そのものにすり替わってしまう。言うまでもないことだがこのとき虚構においての問題として生まれた「物語の不在性」は、90年代に現実社会において顕在化し、さらに2000年以降には虚構と現実、そしてリアリズムの関係の崩壊に人々がひどく惑ってしまったため、今では奇形としての物語が溢れんばかりに吐き出され続けている。この流れはもう少し続くのかもしれないが、僕は物語の回復の兆しを信じているので北斗の拳を読んであれこれ考えているのだ。

余談であるが、第一話のケンシロウのみ若干それ以後と性格が異なるのも面白い。けっこうアホ面を下げたりニコニコ笑ったりしている。それから初期のリンは非常にロリロリしている。原哲夫というのは野郎の世界ばっかり描いているような気がしがちだが、どちらかというと彼にはいろんな素質があった中で、北斗の拳の特に後半において確立されてしまった「漢」なフレイヴァに自分がすっかり染まってしまい、作家性になってしまったというのが正しいような気がする。

2006.11.12 | | コメント(0) | トラックバック(0) | [マンガ

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