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俺と悪魔のブルーズ

「俺と悪魔のブルーズ」は、伝説的ブルースマンであるロバート・ジョンソンが「ボニーとクライド」のクライドと旅をするという、設定を聞いただけでも実に面白いマンガ。サスペンス的な展開を続けながら、綿密な時代考証によってキング牧師もマルコムXも登場していない禁酒法時代のアメリカで黒人がどのように扱われていたかを意欲的に描いている。

平本アキラのマンガを語る上では当然「アゴなしゲンとオレ物語」について書くのを避けられないのだが、あの作品と「俺と悪魔のブルーズ」に共通するこの人の面白さとは、アクが強く外連味のある映像的な描写を意図的に盛り込んでいることだ。他の作家と比較してその演出的な手法を意識的に行う度合いが極端に高いところが特徴的な部分だと思う。どのページをめくっても、複雑に考え抜かれたカメラの位置、コマ割りによる凝ったカット、微細に描き込んで人物の顔に濃い影を生み出すライティング技術、繰り返される緊張感に満ちたクローズアップなどが散見される。それを分かりやすく感じたければ、この作品を日本語が全く読めないつもりで読んでみるとよい。大変綿密に計算され、強い意図によって描かれたこのマンガの絵を知ることができるはずだ。

「アゴなしゲンとオレ物語」では、このような映像的表現はギャグの一部として機能するか、そうでなければ単に作者の楽しみとして僕には映った。凝った表現を見るほどに、作者がマンガという手段を楽しんでいるのが伝わって、すがすがしい気分になったものだ。しかし「俺と悪魔のブルーズ」では、その映像表現はまず演出として機能し、まさに本領発揮とばかりに物語に凄みを与えている。

それでも僕がこの作者に望むことは、どうか雰囲気のあるものを描くことばかりが楽しくなりすぎなければいいなということである。絵として完成されたものを描くことが繰り返されたあげく物語が意味を失ったり遅々として進まなくなり、読者から遠ざけられてしまうマンガは少なくない。平本アキラの細部に対するこだわりからあまりに熱意のこもったものを感じるので、思わずそのような作家に近づいてしまうのではないかと心配せずにはおれない。「アゴなしゲンとオレ物語」ではどんなに作者が絵やシーンの見せ方に熱中してもせいぜい数話でエピソードが完結していたのでよかったが、長編のマンガではそうはいかない。

しかしもちろんそんなの杞憂に過ぎないのだと思う。この面白い物語を、平本アキラが最後まで楽しませてくれるのに期待している。

2007.03.04 | | コメント(0) | トラックバック(0) | [マンガ] [音楽

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